[ 新・平成の百物語 ] ~ 99%オチのある新タイプの短編集 ~

「デビルキャット」

【 見城T志さん/高校生:18才 】

●この夏、俺は不気味な猫を見ました。

●俺は工業高校の三年生。卒業後は自宅の工務店で働くことになっているので、受験勉強はしていません。ヒマな時間はというと、仲のいいGという同級生といつもつるんでいます。俺が見た不気味な猫とは、そのGの親戚の家に泊まりに行ったときの話です。

●Gの親戚の家は、茨城県の海岸近くにありました。夜の寝静まる頃には波の音が聞こえてくるほどです。その家は、おばあちゃんとGの二つ年下の従兄弟とその両親とで住んでいる四人家族。俺とGは海水浴がしたくて、夏休みの三日間、泊まり掛けで遊びに行ったんです。電車とバスを乗り継いで夕方に到着した俺たちは、間もなく夕飯をごちそうになりました。俺たちは、Gの親戚の人たちと学校の話とか翌日の予定の話とかをして、すぐになごみました。その後はGの従兄弟のJ君の部屋で、トランプをしていました。そのとき、J君はこんな話をし始めました。
「G兄ちゃんたち、恐い話って好き?」
「ん? 恐い話って何よ、学校の怪談とか?」とGがニヤニヤしてのってくると、
「デビルキャットっていう話なんだけど…」とJ君が小声で言いました。
Gはこのての話が好きだったので、
「ホントに恐いかどうか、話してみろよ」と催促しました。

●J君の話とはこうでした。
ある寂れた墓地でのこと。夜になると一匹の猫が出没して、敷地内の地面を掘って何かを食べているというのです。それを目撃した何人かが、みな口をそろえて同じことを言うらしいんです。
「骨を噛み砕くような音が聞こえて、そのまわりにはボンヤリと輝く物体がいくつか見えていた」と…。そのうち
「あの猫は死者の骨を毎晩食べにやってくる、悪魔の猫なんだ! かかわり合いになると呪われる」という噂になったらしいんです。そしてJ君の学校ではその猫を「デビルキャット」と呼んでいると言ってました。俺は「ホントかな~?」なんて、あまり信用してなかったんですけど、なぜかGが妙な顔つきでこう言ったんです。
「おい…、この家の隣って、たしか墓地の端っこだったよな?」
するとJ君はニヤッと笑って、
「あ、G兄ちゃん、さすが! わかっちゃった?」と言って窓の外に目をやりました。俺たちも二階の窓、つまりJ君の部屋から外を覗いてみると…、

そこに、いたんです!
 
不気味な話J君が言っていたデビルキャットが。地面を掘ってバキッバキッという音をたてながら、何かを食べているところでした。そして回りには何か輝く物体がいくつか見えました。

●次の日、俺たちは海水浴にでかけるとき、隣の家の子どもに会いました。小学生らしいその男の子はGを見ると「こんちわ」と挨拶をしてきました。Gはその子に聞きました。
「君の部屋からも裏の墓場が見えるよね?」
「うん」
「夜、そこで猫が何かを食べているらしいんだけど、見たことある?」
Gがそうたずねるとその子は、
「んんん…、ぼく、知らない」と言って、気まずそうに走って行ってしまいました。

●夏休みのあと、クラスメートにこの話をしたんですが誰も信じません。俺たちが「デビルキャット」を見たのは初日だけです。でも本当の話なんです。ダーク・アサクサさん、あの猫の正体はなんだったんでしょうか?

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【 ダーク・アサクサの見解 】

ダーク浅草

■見城君、もちろん私はあなたのお話を信用していますよ。そしてこのお話と一緒に添付してくれたその部屋から見える外の写真も拝見しました。では解説しましょう。

■キーワードは四つ。

1)「骨を噛み砕くような音」
2)「いくつかのボンヤリと輝く物体」
3)「海の近くの家」
4)そして「気まずそうに走って行った隣の子ども」

これらを総合して考えれば、答えはでてきます。結論から言えば、その猫は死者の骨を食べている「デビルキャット」などではありませんよ。その猫はたぶん野良猫でしょう。だからつねに餌を探しています。そしてあるとき、その猫は知ってしまったのです。夜になると墓地の空き地に餌があることを。で、その餌とは何か?

■私の推理はこうです。それは死者の骨ではなく、単なる食べ残した魚だったはずです。海にほど近いその町では、夕飯にお刺身や焼き魚や煮魚が頻繁に出ることはよくあることでしょう。とはいえ、魚があまり好きでない人だっているはずです。まして子どもならなおさらです。煮魚などはいやいや手をつけ、けっきょくは食べ残してしまったりするものです。そして親にバレないようにソッと捨ててしまうこともあるかもしれません。例えば、裏口からこっそり出て墓地の空き地などに…。つまり、それは隣の家の子どもが食べ残しの魚だっただけです。G君の従兄弟のJ君は、自分の部屋からそれをときどき見ていたんでしょう。そしてそれを「恐い話」のネタとして、あなたたちをからかっただけなのです。それだけの話です。え? では、猫のまわりでボンヤリと輝いていた物体は何だったのかって? それは当然、食べ残した魚を持ってくるのに使ったラップが、光って見えただけですよ。

《 終わり 》

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Illustration:Aoki seiichirou
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