[ 新・平成の百物語 ] ~ 99%オチのある新タイプの短編集 ~

「老人の生首行脚」

【 見城T志さん/高校生:18才 】

●私は受験を控えた女子高生で、今年の冬休みに虫垂炎(盲腸)で一週間入院をしました。そのとき、夜中の病院の窓から見たことについてお話します。

●手術も無事に終わって、退院まであと二日となった夜のことでした。六人部屋の病室のベッドで眠っていた私は、ふと目が覚めました。なぜかはわかりません。腕時計を見ると午前5時15分。冬場だったので、あたりはまだ真っ暗でした。私以外の患者さんたちは、もちろん全員寝静まっていました。私は窓際のベッドに寝ていたのですが、その窓の外の方から「ズリッ、ズリッ、ズリッ」という音が聞こえてきたのです。
 
不気味な話私は何の音かしらと思って上体を起こし、カーテンを少しだけ開けて外を見ました。そこは、車が通れないほどの狭く、街灯も少ない路地でした。そしてその路地を二階の窓から見た私は、ギョっとしました。そこには、人間の顔のような物だけが5~6個、ゆっくりと動いていたのです。そして「ズリッ、ズリッ、ズリッ」という音は続いていました。
私は寝ぼけているのかと思い、その動いている物をさらによく見ました。でも、やはりそれは人間の顔、しかも老人の顔のような物で、同体は見えませんでした。その顔たちは、なにやらブツブツとつぶやきながら、路地を左の方に向かって去って行きました。

●私は、こうした体験についてとくに怖がるタイプではありませんが、あれは一体なんだったのか、理解できずにいました。けっきょく誰にもそのことを話さなかった私は、翌日もほぼ同じ時刻に同じ物を見てしまいました。そして日があけてから、そのまま退院しました。

●ダーク・アサクサさん、信じてもらえるか分かりませんが、二晩続けて見たあの光景は本当に見たことです。どうか解説をお願いいたします。

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【 ダーク・アサクサの見解 】

ダーク浅草

■T志さん、あなたが見た「老人の生首のような行列」とは、一体何だったのか? 実は今回あなたが見た物について、私はリサーチいたしました。つまりあなたが入院した病院や地域など、調べてみたのです。そしてひとつの結論が出ました。その正体は「BPRC」ということだったのです。では、「BPRC」についてご説明しましょう。

■あなたはその病院や周辺の地域についてお詳しくはないかと思いますが、実はその病院の近所に老人ホームがあるんです。そしてあなたが見た「老人の生首のような行列」は、そこに入居しているご年輩の方々だったのです。もちろん今でもご健勝な方たちです。もっと詳しくいえば、そのホームの中でもある特殊なグループの方たちだったのです。

■その老人ホームの名前は『黒松荘』といって、入居者の趣味やスポーツなどによって様々なサークル活動も行われています。そしてそのサークルの中のひとつが前出の「BPRC」なのです。正式名称は「Black Pine Running Club」、つまり「黒松ランニング倶楽部」という早朝散歩の会だったのです。夜明け前から起きて、サークルのイメージカラーである真っ黒なジャージのユニフォームを着て、近くの公園までみんなで出かけるそうです。公園では違ったグループとも一緒にラジオ体操をし、その後またゆっくりとホームに帰ってくるのが日課になっているそうです。夜明け前の薄暗い路地では黒いジャージが見えなくて、まるで「生首の行列」に見えても不思議ではありません。そしてあなたが言う「なにやらブツブツとつぶやきながら」というのは、
「最近、ホームの飯がまずい」だの
「田中さんは耳が遠くなって話しづらい」だの、きっとそんな話をしていたんでしょう。早朝なので迷惑にならないていどの小声で。

■まぁ、早朝のそうした物音に目ざとく起きたあなたは、体力が順調に回復していた証拠なんでしょうね。安心してください。

《 終わり 》

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Illustration:Aoki seiichirou
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