【 小林R子ちゃん/小学生:10才 】
●私の住んでいる小さな村には、妖怪が出るんです。 ●村には小川が流れていて、私の通っている小学校はその川の向こう側にあります。バス通りにもなっている通学路には『田中新橋』というコンクリートの橋があって、そこを通って15分くらいで学校に着きます。でも近所の男の子たちは、ときどきそこを通らずに近道をすることがあるんです。それは『弥伍平(やごへい)さん』という屋号の農家のそばに架かっている『弥伍平橋(やごへいばし)』という一本橋を通ると学校の裏門に出るからです。妖怪はその橋のたもとで出るそうなのです。 ●私が男の子たちから聞いたのは、こんな話です。昔から「雨の日には弥伍平橋に妖怪がでるぞ」という言い伝えがあったそうです。だから雨の日は誰も近づかなかったらしいんですが、最近になって転校してきた子が 「ほんとに出るかどうか確かめに行こう」 と言い出したらしいんです。そして男の子たち四~五人で弥伍平橋に行ってみると、晴れた日には見なかった蓑笠(みのかさ)を被ったお爺さんが草かげに立っていて、慌てて帰ってきたそうです。 「あれは『ゲゲゲの鬼太郎』に出てきた『油すまし』に似た妖怪じゃないか?」とか、 「あれは子どもを食べる『笠爺(かさじじい)』という妖怪だ」とか大騒ぎをしていました。ただ、それでも懲りずに男の子たちはまた雨の日にその妖怪を見に行くと、それは蓑笠を被せたただの人形だということが分かったんです。 「なんだ~、誰かのイタズラじゃないか~」 と結論付けたんですが、実はこれで話は終わりませんでした。 ●妖怪の正体が分かったあとは、男の子たちは雨の日でも弥伍平橋を渡るようになりました。そしてある日、また学校で大騒ぎになったんです。 「おいっ! あの妖怪は人形じゃねぇ~ぞ!」 とおびえる子が何人もいたんです。その子たちの話はこうでした。 ●弥伍平橋を渡るとき、雨の日にだけ出ている『ただの人形』だと思っていた『笠爺』がいきなり、 「ここを通るんじゃねぇ~!」 と怒鳴って橋の前をふさいだそうです。複数の男の子たちが体験しているので、どうやら本当の話のようでした。男の子たちは家に帰ってからその話を親にしたところ、どの家の親も 「あの橋のたもとには、ずっと昔から妖怪がいるんだよ」と言われたそうです。 ●ダーク・アサクサさん、私はふだんから弥伍平橋は通らないので恐くはないんですが、この『笠爺』という妖怪は一体何者なんでしょうか? .
【 ダーク・アサクサの見解 】
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イラスト:青木青一郎