【 見城T志さん/高校生:18才 】
●この夏、俺は不気味な猫を見ました。 ●俺は工業高校の三年生。卒業後は自宅の工務店で働くことになっているので、受験勉強はしていません。ヒマな時間はというと、仲のいいGという同級生といつもつるんでいます。俺が見た不気味な猫とは、そのGの親戚の家に泊まりに行ったときの話です。 ●Gの親戚の家は、茨城県の海岸近くにありました。夜の寝静まる頃には波の音が聞こえてくるほどです。その家は、おばあちゃんとGの二つ年下の従兄弟とその両親とで住んでいる四人家族。俺とGは海水浴がしたくて、夏休みの三日間、泊まり掛けで遊びに行ったんです。電車とバスを乗り継いで夕方に到着した俺たちは、間もなく夕飯をごちそうになりました。俺たちは、Gの親戚の人たちと学校の話とか翌日の予定の話とかをして、すぐになごみました。その後はGの従兄弟のJ君の部屋で、トランプをしていました。そのとき、J君はこんな話をし始めました。 「G兄ちゃんたち、恐い話って好き?」 「ん? 恐い話って何よ、学校の怪談とか?」とGがニヤニヤしてのってくると、 「デビルキャットっていう話なんだけど…」とJ君が小声で言いました。 Gはこのての話が好きだったので、 「ホントに恐いかどうか、話してみろよ」と催促しました。 ●J君の話とはこうでした。 ある寂れた墓地でのこと。夜になると一匹の猫が出没して、敷地内の地面を掘って何かを食べているというのです。それを目撃した何人かが、みな口をそろえて同じことを言うらしいんです。 「骨を噛み砕くような音が聞こえて、そのまわりにはボンヤリと輝く物体がいくつか見えていた」と…。そのうち 「あの猫は死者の骨を毎晩食べにやってくる、悪魔の猫なんだ! かかわり合いになると呪われる」という噂になったらしいんです。そしてJ君の学校ではその猫を「デビルキャット」と呼んでいると言ってました。俺は「ホントかな~?」なんて、あまり信用してなかったんですけど、なぜかGが妙な顔つきでこう言ったんです。 「おい…、この家の隣って、たしか墓地の端っこだったよな?」 するとJ君はニヤッと笑って、 「あ、G兄ちゃん、さすが! わかっちゃった?」と言って窓の外に目をやりました。俺たちも二階の窓、つまりJ君の部屋から外を覗いてみると…、 そこに、いたんです! ●次の日、俺たちは海水浴にでかけるとき、隣の家の子どもに会いました。小学生らしいその男の子はGを見ると「こんちわ」と挨拶をしてきました。Gはその子に聞きました。 「君の部屋からも裏の墓場が見えるよね?」 「うん」 「夜、そこで猫が何かを食べているらしいんだけど、見たことある?」 Gがそうたずねるとその子は、 「んんん…、ぼく、知らない」と言って、気まずそうに走って行ってしまいました。 ●夏休みのあと、クラスメートにこの話をしたんですが誰も信じません。俺たちが「デビルキャット」を見たのは初日だけです。でも本当の話なんです。ダーク・アサクサさん、あの猫の正体はなんだったんでしょうか? .
【 ダーク・アサクサの見解 】
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イラスト:青木青一郎